汝自身を知れ

「くもりなき一つの月をもちながら、浮き世の雲に迷ひぬるかな」とは一休禅師の言葉で、人は誰でも曇りのない明るい月を心に持ちながら、浮き世のさまざまことに惑わされて、いつしか輝きがなくなるという意味である。
人はこの世にある善きものをたくさん見聞きして、そのどれかになりたくなって迷っていくばかり。ああもなりたい、こうもなりたい、こういうふうになってみたいと、さまざまな欲望から絞り切れず、いろんなことに悩まされてしまう。ついつい流行っていることに固執して、あれこれ同じようにやっては中途半端になるだけ。肝心要の自分の素晴らしさをどんどん忘れていく。
だから、外に向けていた目を自分の方に向けること。あるがままに自身を見つめて、長所も短所も受けとめてみよう。そして、これまで見たり聞いたりしたことを、自分なりに試して力を図っていけばいい。すべて上手くいくほど甘くはないけど、意識的に取り組むことで、何が楽しいのか、面白いのかがわかってくる。頭で知ることも大事だが、身を持って知ることで自信が生まれてくるだろう。