価値の創出

創作物の価値観とは、自分ひとりで決められるものではない。美術に携わる人をはじめ、さまざま鑑賞者たちによって、作品の個性を尊重していきながら好いものにしたいと思いで、互いに力を合わせて築き上げていくもの。だから、自分自身がどれだけ努力しても、そこにはできる範囲に限界がある。周囲の人たちがその気になって、応援してくれる良好な関係が必要条件で、それは普段の美術談義の延長線上で発生するから、美術へ誠実な態度でいることが一番肝心なのだろう。

ただし、最大限のやるべきことをしたのにも関わらず、まったく取り合ってくれない人たちもいる。これは人それぞれの好みが違うから、どうしようもないことと割り切ろう。とにかく、すべての人から好かれようとすると、作品の個性や主義主張を抑えてしまい、結局のところ八方美人のようになって、どこにでもあるような薄っぺらな表現になるだけだ。つまり、多少は嫌われることを恐れず、自分らしく本音で生きていくこと。敵のいない人には、本当の味方もできない。親しい仲間は数名もいればいいと達観して、ひたすら作品制作へ集中していくことが大切になるのだ。