伝承

ことわざの「積善の家に余慶あり」とは、道徳にかなった行ないを重ねる家庭は、いつの間にか良い運が集まりやすく、その行為の結果として子孫にも良いことがあるという意味だ。いわゆる先祖代々から伝わっていることは、それ相応の合理的な理由があるため、この不思議な掟を馬鹿にしてはいけない。たとえ家の文化は外からは見えなくても、こつこつと教えに従って努力すれば、いずれ誰の目にもハッキリとわかるものだ。

このたびの冨永恒光先生とご家族による三代展。ギャラリーの中には冨永家の家風が頬を撫でるようにやさしく舞っている。生前、冨永先生の理想していたものを受け継いで、それぞれが自分の個性に合う表現を目指し創意工夫している。すべては美術へのリスペクト。誰かが観ていようがいまいがどうでもいい。創作は自分との戦いである。ただし、そこには勝ち負けはない。あるのは次こそもっと上手くなりたい!実にわかりやすいメッセージ。だから、清々しい雰囲気で作品を楽しむことができるだろう。