万能感

「万能感」という言葉がある。その意味は「自分は何でもできると思い込むこと」で、実際の能力とは関係なく、感覚として自分の能力を過信している状態を指す。いわゆる子どもの発達段階において、しばしば見られる現象で大人になるにつれて、自分の能力の限界や周囲との比較、また自分の得意不得意を理解して、徐々に薄れていくもの。

私も若い頃は恥ずかしながら万能感を患って、自分を過大評価して調子に乗る時期があった。現実離れした夢のような理想を勝手にできると思い込んで追い求める。このことはとてもいい経験。たくさん失敗をして身の丈を知らされる。それと同時にいろんな人たちの支えが必要なことに気づかされる。自分一人の力では何もできないことを悟る。

だから今、若い人が自分にはできると思い込んで、理想へ挑戦する姿を目にすると嬉しくなる。有り余るエネルギーで愚直に取り組めるのは若者の特権で清々しい。そういう時に私は万能感にならないように合いの手を入れる。いつでもこけたら起こすから恐れるなと。空気を少し入れてあげるだけで気が楽になれる。つまり、たった独りでしようと思わなければ、意地を張らずに行動できるからだ。