俯瞰

宮本武蔵五輪書に「目の付け方は、大きく広く付ける目である。『観・見』二つの目があり、『観の目』を強く、『見の目』を弱く、遠い所を近いように見、近い所を遠いように見ることが兵法では必要不可欠である。敵の太刀の位置を知っているが、少しも敵の太刀を見ないことが、兵法では大事である」という名言がある。

この一節は、目先のことに目を奪われてはいけない。物事は俯瞰して状況全体を見つめるべし。ここで言う『見の目』とは敵が動かす太刀自体を見ること。脳裏に拡大して映し出すための目。これに対して『観の目』は、全体状況を遠くから俯瞰して観る目。人は目先の動きに目を奪われやすく、故に『観の目』を強くすることが大切だと唱えた。

このような真理は創作活動でも通ずるものがある。目の前の作品制作で結果を出すことはとても大事なことだけど、そのことにこだわり過ぎると小さくまとまってしまう。いわゆる創作するということは、どれだけ自分の限界に挑戦するのかってこと。未知への探求心を漲らせて新しいことをやっていくだけ。現実的な達成感より未来を信じて魂を燃やすことが美術家なのだろう。