沼にハマる

沼にハマるとは、周りが見えなくなるくらい何かに夢中になって、もはや抜け出せなくなっていることを言う。とても多くの時間あるいは金銭を浪費してしまい、人生にプラスの意味でもマイナスの意味でも用いられている。

昨日、ひさしぶりに会った吉村大星君と作品を前にして談笑しているうちに、過去に彼がハマってしまった沼について告白される。それは県美展で2010年から作品応募した4回とも続けて佳作賞になった時に、今の自分にはこれ以上の作品を創り出せないと限界を感じて、県美展から一旦距離を置くべきだと悟ったとのこと。

とにかく佳作賞以上を目指して技術を磨いて毎々上達していくものの、なかなか壁を破ることができなくて、どうすれば克服できるのかばかり考えるようになる。その結果、審査基準に合う作品制作を考えて、県美展中心の創作活動に成り下がり、どんどん本末転倒になっていった。

審査員にどう見られるかを気にした生き方では本物になれない。また、作家活動をスタートさせて以来、ずっとモチーフだった猫を描いたのでは通じないだろう。もっとインパクトのあるモチーフが必要だ。それが描けるようになるまで休もうと決心する。このことが功を奏して大賞に輝く。沼にハマったと自覚したことで抜け出す。父とはコンセプトは違えど、超絶技巧を武器に、新たなスタイルへ舵を切った。