八方美人

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Kは、僕を憎んでいる。僕の八方美人を憎んでいる。ああ、わかった。
Kは、僕の強さを信じている。僕の才を買いかぶっている。
そうして、僕の努力を、ひとしれぬ馬鹿な努力を、ごぞんじないのだ。
らっきょうの皮を、むいてむいて、しんまでむいて、何もない。
きっとある、何かある、それを信じて、また、べつの、らっきょうの皮を、
むいて、むいて、何もない、この猿のかなしみ、わかる?
ゆきあたりばったりの万人を、ことごとく愛しているということは、
誰をも、愛していないということだ。        太宰治「秋風記」
 
美術の世界は八方美人ではいけない。なぜなら美術は、それぞれの見方、考え
方を表現として定めていくため、どうしても他と異質な意見が生まれていきます。
だから意見が合わない人もいれば、意見の合う人もいるのが当たり前で、
むしろ衝突は真の美術家へ成長するための逃れられない洗礼なのでしょう。
自分を貫く美術家には敵も味方も存在する。誰にでも愛されるなんて幻想は
捨てて、妥協のない明確なポリシーを育てたいものですね。