自由

f:id:gallerynakano:20201005213300j:plain


「ほとんどの人間は実のところ自由など求めていない。なぜなら自由には責任が伴うからである。みんな責任を負うことを恐れているのだ」という名言がある。私はこの言葉を見つけた時に、「自由」を「美術家」に代えてみたら、とても腑に落ちる言葉になると思った。なにせ、美術家という職業には憧れたとしても、実際に作品で生活するのは大変なこと。そもそも鉄板で売れる作品なんてものはない。その人の個性から表現された独創性のあるものを、面白がってくれる鑑賞者と出会いがあって、それもそこそこの人数があってこそ、初めて生活することが成り立つ世界。やはり背負う責任の重さは半端ではないのだ。

ちなみに画家の松田正平先生が好まれた言葉に「犬馬は難し鬼魅は易し」がある。この意味は、犬や馬のようにありふれたものを描くのは難しいが、鬼魅(ばけもの)のように実体のないものは何とでもなるから実は易しい。身近なよく知られているモチーフを好んで描き続けただけに、本質を失わせずに表現するには、先入観にとらわれずに創意工夫していくことを奨励した。さすがにプロの中のプロ。これくらいストイックにやらなくては一流になれないのだ。つまり、美術家とは堅気の人たちと一線を引く本物の自由人。あまりお金は持っていないけれど、美術に限らずさまざまな文化的なことに精通し、思い思いに自己の世界を楽しみながら生きている。だから本当に自由に生きるって、普通の人のように生きるよりも、経済的には大変なことになるだろう。