寅さん

映画・男はつらいよシリーズの第12作目は『私の寅さん』。このお話しでは岸恵子さんがマドンナとして登場。女流画家・りつ子役を演じ、寅さんとの初対面のシーンでは「女だてらに絵なんて描く奴にろくな女はいねえ」と、のっけからケンカをした。しかし、その後はいつものように寅さんが惚れて振られて旅へ出ていくというパターン。笑いと涙の人間ドラマの描写は美しかった。そんなこの映画には名台詞があった。寅さんと義理の弟・博たちとのやりとりは美術の存在意義を教えてもらう。
博「でもね、人間が生きるってことはそれだけじゃ決してない。そうですよ、だからこそ、りつ子さんみたいな人が必要なんですよ…つまり、芸術家がね」、寅「そうそう」、社長「それどういう事?」、博「ん…だから美しい音楽を聴いたり素晴らしい絵を観て、感動するためにだって、僕たちは生きてるんじゃないですか」。
芸術鑑賞は感受性を目覚めさせ、自らの好奇心を掻き立てて、新しい目を育んでくれる。つまり、自分を豊かにすることで、人生は豊かになっていく。実に単純だけど、奥深い言葉だと思う。やはり寅さんはカッコイイ!