恩送り

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その昔、上京した時にお会いしたある画廊の方に「山口県から来ました」とご挨拶したら、すぐに「香月先生の故郷ですね」というお言葉をいただいた。当時の私は20代前半。この世界について右も左もよくわからなかったため、「へえ~、やっぱりスゴイだ」としか感じない程度だった。本当に無知で生意気で万能感が抜けていない。思い出したら顔から火が出てくる。ただ、大人たちはとても寛容な時代だった。
その後、閉店時間に来るように言われて、お酒を酌み交わしながら香月先生について教えてもらう。しかもすべてその画廊の方の驕りだった。一期一会の間柄なのになんて懐の深い人なんだ。帰山後、速攻でお礼状と外郎をお送りした。田舎ではあり得ない贅沢三昧をしたため、少しでもお返ししようと考えて宅配便でお送りした。するとほどなく1通のハガキが届く。内容は熱いエールとご実家が外郎屋の彫刻家 米吉先生について書かれてあった。おおー、どこまでもよく知っておられる。本当に良い方と巡り会えたのだと思った。
ちなみにこのエピソードだけではなく、この方以外にも多くの先輩方と出会っては、叱咤激励されて可愛がっていただく。なんでもかんでも直感を信じ、好奇心の赴くままに行動した結果、運よく素敵な方たちと繋がることができた。そして、この20代に経験したことが今の私をつくっている。つまり若者を応援しているのは、自分が先輩たちからもらった文化を、次の世代にバトンように渡していくだけ。
別の意味で可愛がってくれた人の方が多かったけど、先輩と呼ぶにふさわしい方に恩返しできないことを恩送りしているつもりだ。美術とは見えないものを感じる世界。見えない糸を感じることで想像力は豊かになる。それは人工知能ではできない。人の生の声によって遺伝子は覚醒されていく。だから美術は面白い!どこまでの人対人なんだ!