さくらさくらさく さくらちるさくら

「さくらさくらさくさくらちるさくら」とは漂泊の俳人 種田山頭火の句。これは要するに「桜、桜、咲く桜、散る桜」と漢字を使って表記すれば、言いたいことはハッキリとしてくる。そこをあえてすべて平仮名にすることで、暗号のような不思議な感覚を醸し出す…

噓も方便

ことわざにある「嘘も方便」とは、仏が現世で苦しみ悩んでいる人たちを救済し、悟りへと導くための便宜上の手段として嘘をつくこともある。そのことを踏まえて、教えを乞う人をより高い境地に導くための嘘なら許容範囲。いわゆる大きな善行の前では、ある程…

初心忘るべからず

「是非の初心忘るべからず。時事の初心忘るべからず。老後の初心忘るべからず」という世阿弥の名言がある。 これは始めたばかりで未熟だった芸を忘れず、それを判断基準にして技量を磨いて向上させていく。また、その年齢にふさわしい芸にするために、これま…

恩送り

昨日、年下の友から電話で彼の義父であり、また県高校サッカー界のゴットファザーの訃報を告げられた。私は突然の知らせに息を飲み込んだ後、お悔やみとともに在りし日のお姿を偲んだ。結局、直接お話ししたことはないけど、30数年前まで母校サッカー部の行…

チャンス!

先月下旬、都会で美術を勉強している若者から電話がかかってきた。何ごとかと思いながら出てみると、その正体は操作誤りによる間違い電話。しかし、この数日前に彼女のSNSで大学院修了式の模様を見ていたので、タイムリーにお祝いが言えて良かった。偶然とは…

憧れ

誰だって子供時代は何かに憧れて、理想の未来の姿を想像していく。まだ人生の先行きが決まっていないからこそ、自分をどんなにカッコよくイメージしても、やり過ぎってことにはならない。子供の成長とって大切なのは心を熱くする憧れの存在。たとえ馬鹿にさ…

若さ故

一昨日の午後、13歳の中学生が今描いている最中の絵を見せるために姿を現す。実はここのところ、同じ理由でよくやって来る。とにかく純度100%の年齢。何ごとも鋭く本質を射抜こうとする。だから、中途半端なことを言ったら容赦がない。どこまで噛み砕いて言…

ここから

46年前、山口県には公立美術館がまだ一つもない時代に、山口市という全国の県庁所在地で一番人口の少ない街で、当ギャラリーはひっそりと産声を上げる。母が倉敷市の美観地区にあるような小さな文化交流施設を目指して、何の計画性のないまま無謀をもって始…

目力

松陰先生が残した「悔いるよりも、今日直ちに決意して、仕事を始め技術をためすべきである。何も着手に年齢の早い晩い(おそい)は問題にならない」という名言がある。 美術の世界において、どれくらいのキャリアやレベル、または年齢の人を新人賞の対象にし…

人間万事塞翁が馬

ことわざの「人間万事塞翁が馬」とは、将来のことは予測できないから、幸せなことが不幸になったり、不幸なことが幸せになったりと、いつ転じるのかはわからない。そのゆえ、ものごとの結果に対して一喜一憂や右往左往してはいけないという意味である。 例え…

リープフロッグ

先週末、テレビ番組で知った「リープフロッグ(蛙の跳躍)現象」。ビジネス領域において新興国が先進国から遅れて新しい技術に追いつく際に、既存の技術を導入する前に、さらに新しい技術を導入するため、通常の段階的な進化を踏むことなく、すべて飛び越し…

愚直

岡本太郎の著書に「格好だけ、世間にうまく売り込んだだけの一流を相手にしても意味はない。たとえマスコミに知られない無名の人でも、自分を貫いて生きている人がいたら、そういう人を見つけて付き合うことだ」という名言がある。 先日閉幕した県美展には、…

切磋琢磨

人はみんなを喜ばそうとして一所懸命になれる人の姿を見るといつの間にかワクワクする。それがどんなパフォーマンスであったとしても、何かを与えるために努力する人に魅力を感じる。だから、人は自分が期待することに応えてくれる人の元に集まってくる。例…

若さ

世の人の若さと言われるものは、およそ2つの種類にわけられる。1つ目は活き活きとした生命力を醸し出す生物的な若さのこと。一般的に18歳くらいまでは特別に何もしなくても、どのようにでも形を変えられるしなやかな柔軟さを持っている。まだまだ何者でもな…

熱量

「人間は一生のうち逢うべき人に必ず会える。しかも、一瞬早すぎず、一瞬遅すぎないときに。しかし、うちに求める心なくば、眼前にその人ありといえども、縁は生じず」という名言がある。 昨日の午後、この言葉のようなことが実際に起きた。グループ展に参加…

顔向け

早いもので県美展は本日千秋楽。あいにくのお天気が続いてしまったものの、同展最年長の81歳で大賞受賞した井岡義朋さんが話題になったこともあり、ほぼ平年並みの人の動きで無事に幕引きできそうだ。これも波瀾万丈な人生を乗り越えて、創作をやめずに取り…

而今(にこん)

一昨年の6月、コサカダイキ君の個展期間中に学生さんがひとりで来店する。一見はどこにでもいそうな若者。しかしながら、熱心に作品鑑賞する姿はなかなかのもの。作品を目に焼き付けるというのはこういう所作のことを指す。まだよくわからないけど面白そうで…

余白の美

今年の正月に放映されたNHKスペシャル 「世界に響く歌 日韓POPS新時代」では、アニメ【推しの子】の主題歌「アイドル」が大ヒットして、様々なヒットチャートにランクインした人気音楽ユニットのYOASOBIも登場する。 「アイドル」のサビのメロディーにヨナ抜…

チャレンジャー

昨日の午前中は今週末で会期が終わる県美術展へ。ひょうや突風の洗礼を受けながら足を運ぶ。本当に修行僧もビックリするくらい激しい天候である。 中也の詠んだ「冬去れよ そしたら雲雀(ひばり)がなくだろう 桜もさくだろう」という短歌が浮かんできた。と…

論より証拠

格言にある「天は自ら助くる者を助く」とは、天は他人の助けを借りずに自分自身で努力する者に力を貸してくれるという意味である。平たく言うと、誰かの力に助けてもらって、どうにかしようとする人に、充実した成功体験は味わえない。人生は自らの手で未来…

関心力

ここ数ヵ月、ギャラリーには美術家を目指す若者が入れ替わりやって来るようになった。その顔ぶれはほとんど初心者。実際に絵の具や鉛筆で描くのではなく、デジタルで描いた作品をスマホで見せてくれる。やはり文明の利器は素晴らしい。作品制作の基礎知識が…

素直さ

岡本太郎の著書に「だれでも、その本性では芸術家であり、天才なのです。 ただ、こびりついた垢におおわれて、本来の己れ自身の姿を見失っているだけなのです。いずれにしても、現在を不毛にし、生活を味気ないものにしている。余計な夾雑物(あるものの中に…

惑星直列

惑星直列という言葉がある。その意味は太陽系内の惑星が太陽に向かってほぼ一直線に並ぶ現象のことだ。今月の山口市はさながら惑星直列と呼びたくなるほど、いろんなアート展が同時期に開催されて、文化芸術の力で街は活気に満ちている。それもその気になれ…

幸福の七ヶ条

漫画家 水木しげる氏の「幸福の七ヶ条(幸福論)」とは、長い年月にわたっていろんな人たちの生き方を観察しているうちに、幸せになるための知恵を七か条にまとめた本のことである。 第1条は「成功や栄誉や勝ち負けを目的にことを行ってはいけない」。第2条…

伝承

昨日のお昼はエフエム山口で新井道子さんがパーソナリティを勤める番組「ひといき-Hitoiki-」のトークコーナーに、今週のテーマが「アートを語ろう」であるため出演する。このようなことはかれこれ16年ぶり。前回も県美展の会期中にお声がかかり、同時開催し…

断捨離

いわゆる断捨離とは、モノへの執着を捨て、不要なモノを減らすことにより、生活の質の向上や心の平穏、運気向上などを得ようとする考え方。ただし、実際にやり切ることは容易ではない。ついつい甘い誘惑に負けてたり、あれこれ雑念が湧いて横道にそれていく…

度量

過去の県美展で大賞を含めて7回ほど入賞した際に授与された表彰状を作品にしてみよう。表彰状という公募展へ挑戦する作家にとって、作品評価を裏付ける権威の象徴を砕いて、ペーパークラフトで新しい価値観を創り出す。過去の栄光にこだわったり、未来へ楽観…

本能

先週より始まった県美術展で栄えある大賞を受賞した井岡義朋さんの絵画作品「鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)」について、成相肇審査員は以下のような講評を公表した。 一目見て圧倒的だと感じた。兵士、銃撃や爆撃など戦争という主題は明らかだが、大画面の…

沼にハマる

沼にハマるとは、周りが見えなくなるくらい何かに夢中になって、もはや抜け出せなくなっていることを言う。とても多くの時間あるいは金銭を浪費してしまい、人生にプラスの意味でもマイナスの意味でも用いられている。 昨日、ひさしぶりに会った吉村大星君と…

忠告

「弱いものが強いものに勝ち、柔らかいものが剛いものに勝つ。そのことはだれもが知っているが、行えるものはいない」とは老子の教えだ。 かつて、臼杵万理実さんの作品名に「弱虫でもできること」があった。これは20歳前後に絵を思うように描けなくて、嫌に…